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これでいいのか?K407次:広州ー海口生き

06年6月9日〜6月10日乗車 著者:ボーゲン管理人

*文章および画像は著作者にあります。したがて無断使用は厳禁!!

 6月9日。広州ではここ数週間、天候に恵まれない毎日で、明け方は雷雨、夕方は湿り雨と続き、天候の不安を常に抱えていました。
この日は仕事が終わり直ぐ広州へ行き、海南島へ行く列車に乗ることでした。目的は海南島三亜の観光調査。今となっては半ば物見遊山になっていますが、せめて三亜市だけでも情報収集だけは怠らずにいました。
 そして海南島行きの列車は本土から海南島海口市まで通じた初めての列車で、これに乗車して、何とか旅行プランに生かせないものかと思い、思い切って乗車を試みました。

 現在海南島に行く列車は広州と海口を往復するK407/8次列車が1日1往復しているのみです。
この列車は2005年1月に定期運行を開始しました。この列車のメインはなんといっても船で列車を運ぶことで、大陸南端の海安から海南島の北入り口の省都:海口まで船を使って車輌ごと運ぶわけです。
基本情報は、

K407次:広州22:26→海口10:26 
K408次:海口18:58→広州6:48
距離794キロ、乗車時間12時間。
硬座143元、硬臥263元、軟臥400元

 で、海難事故は1回起こしたことがあり、また台風が来て、船の渡航が出来なくなると、停運になる場合もあります。
この船は2重構造になっており、上はバス、下は鉄道を運びます。乗客は船内に設けられたトイレ等、指定された場所にしか降りられず、また乗船中は全車両禁煙になります。

  さてまずは切符購入です。中国鉄道の切符は基本的に始発駅から買うものですが、広東省の場合、始発駅発車なら省内どこでも買える“異地售票”という切符のオンライン化がすすんでおり、発車日を含め6日前から切符を発売します。
 私が買った場所は深セン駅で、発車5日前でしたが、すんなり買えました。買った切符は軟臥下段、400元で、誰も切符を購入していないためか、座席番号は1番とトップ番号でした。

 そして切符を見るとちょっとした変化が!
 何と、切符に始発駅と目的地の下にピンインが振ってあるではありませんか!

 従来、中国では切符には当然漢字のみ書かれており、中国語の読み方が分からない外国人は切符を買った後も、時には四苦八苦していましたが、このピンインが振ってあれば、そこの地名を読むことが出来、かなり旅行する際の苦労が少し和らぎます。
 現在この切符ピンイン表示を行っておるのは広東、湖南、上海地区で、後数年もすれば全土に拡大することでしょう。

 さて、朝から雷と雨の大荒れだった金曜日17時が来て、後2時間働きたくても(うそ)どうしても直ぐ会社を離れざるをえませんでした。なぜなら、沙田から直接広州までいく高速バスの最終便が19:00で終わってしまうからです。
 慌てて荷物を抱え、沙田汽車站まで行った後はすんなりバスに乗れました。しかし雨は相変わらず激しく降っており、広州到着がかなり遅れるのではないか―と心配しました。
 私の乗ったバスは広州市汽車站まで行かず、広園汽車站へ行くバスで、広州市内に入って後から来たバスに乗り換えました。

 広州に着いて、先に食事を済ませた後は、直ぐ広州駅駅舎に入りました。発車は2時間前の20:30です。切符が軟臥切符ですので、入り口から入って右側にある軟臥候車室が使えます。広州駅は、今年の旧正月前に改装したはずですが、軟臥候車室は欠陥建築物なのか、数箇所で雨漏りが発生しており、用意してある椅子に誰も座れる状況ではありません。中国の建築基準の甘さと杜撰さがいやでもこういう場で目にしてしまうことはとても悲しいです。

 21時過ぎに深センから来た桂林行きの特快が広州駅に到着するとアナウンスがあったとき、大勢のお客様がホームに消えていきました。この部屋から大勢の乗客が出て行くということは、桂林行き列車:T38次の軟臥は広州でも買えるという状況が分かりました。これは列車で桂林に行くツアーを作る際に、非常に便利です。

 22時前にK407次の乗車案内があり、乗車する乗客は荷物をまとめて列車の停まっている2番ホームに歩いていきました。といっても硬臥や硬座に乗車する乗客は多いですが、軟臥乗車は私ともう一方のみだったようです。軟臥が少ないので、列車が発車する前から軟臥に移りたがる乗客が多く、軟臥車輌の前で列を成していました。
 このK407/8次:列車は16両編成で、軟臥1輌、硬臥10輌、硬座3輌、電源車1輌、荷物車1輌の構成で、食堂車は連結されていません。朝食をとる方法は予め車内に持ち込むか、車内販売で買うことになります。車輌は25Gと集中電源を用いた空調車輌で、外見と内装は見た感じお世辞にも乗車したいとは思えないちょっとくたびれている車輌でした。

 しかし、入り口に立っている女性服務員に切符を見せて、この場で寝台票と交換したら、中にもう一人別の女性服務員が居り、「歓迎光臨、先生」とで迎えてくれて、「荷物を部屋まで運びます、何号室ですか?」といわれたときはあまりのサービスに驚きました。普通、荷物を車輌に運び入れるお手伝いをしてくれる列車服務員はZ列車(直達特快)だけかと思われましたが、まさかこの列車でも行われているのか!と少し見直しました。
 列車乗務員の制服は南国をあしらうかのように水色を基本とした椰子の木がプリントアウトされているシャツでした。また軟臥個室の絨毯や通路の絨毯も何気に椰子の木の模様でした。
 さらに服務員はお茶コップを持ってきてくれて、お茶を注いでくれました。このサービスZ列車でもありません。
 いくら車輌が新しくても、従業員の接客態度が悪ければ、私の列車に対する印象は限りなく低く、車輌が古くても接客態度が良ければ、その列車の印象はとても良くなります。この服務員は終点まで乗客の話し相手として、列車の旅を飽きさせない存在でした。

 相部屋の方は、軟席候車室にいた方でしたが、乗客が少ないため、「私のいびきがうるさいから」と別の部屋に移動してしまい、この時点でこの部屋は私一人のものになりました。それにしてもあまりにも乗客が少なすぎます。高い軟臥だからでしょうが、この隙間を利用して、いかに多くの乗客に乗ってもらうかと色々なアイデアが湧き出てきたりするから面白いものです。

隣には重慶・達州に行く非空調緑皮車の普快が停まっていましたが、非空調なので料金が安く、しかも硬座編成主体の車輌ですので、硬座にはすでに無座の乗客であふれかえっていました。しかも蒸し暑い雨の降っている夜です。こういった風景を見るとなれない私にとってはゾッとします。
 先頭車両に行くと、雨降りしきる暗闇の中から、DL機関車のDF4Bオレンジ色がライトをぎらつかせてやって来て、速やかに車輌と連結しました。
 列車は22:26に雨が降る漆黒の世界に向けて発車しました。牽引する機関車はオレンジ亀のDF4B。時刻表を見ると佛山、三水、肇慶、茂名東、廉江、湛江西、雷州、徐聞・・・と大体30分〜1時間半おきに途中駅に停車していくようです。また部屋においてあった粤海鉄路公司=この列車を管轄している会社のパンフレットが置いてあり、跨海の際の海難に備えた救命具の取り付け方や連絡線の船内構造が載っていました。
 線路は単線だからゆっくりとしたスピードで西方角に進んでいきます。広州境の珠江を渡ると、すぐ隣の佛山市に到着します。
佛山駅に到着し、軟臥に乗客が数人乗り込んで気ました。どうやらK407次は佛山駅でも軟臥切符を発売しているようです。


 佛山を発車し、時計を見ると23時を過ぎていたので、電気を消して横になりました。深夜12時過ぎに、扉を叩く音で眼が覚めました。服務員が三水からの乗客がこの部屋に来るといい、しばらくすると一人の乗客がやってきましたが、私はトイレに行った後、そのまま寝てしまいました。
 朝、6時過ぎに起きましたが、このとき同じ部屋の乗客は雷州駅で降りていました。 外を見ると、昨日からの続きで雨模様の天気ですが、大陸の南に行けば行くほど曇りは続いていますが、何とか雨は止んでいそうです。7時過ぎに本土最後の旅客駅、徐聞駅を過ぎると、周りには何もありません。線路沿線には赤い土の大地が、遠くには耕された水田と、沼地と椰子の木の林が見えるだけで、民家と呼べそうな人が住んでいそうな建物は見当たりませんでした。幾ら鉄道が開通されたといっても、交通に不便な地域に人は住みたがらないのでしょう。

 ちょっと時間が経つと、列車は何もなさそうな場所に停車をします。反対側に行くと海安駅の駅舎があり、直ぐ先に海が見えたので、ここで列車を船に載せるのかと実感しました。

 海安駅に10分ほど停車した後は、広州から牽引してきた機関車は切り離され、入れ替え用の機関車が2台、それぞれの線路で車輌の後ろに去っていきました。いよいよこの列車のハイライト、船への積み込み作業が始まるわけです。


 まず機関車が16輌ある列車の真ん中から半分を切り離し、更にその切り離された車輌を4輌ずつ分けていきます。船には列車を入れる線路が4本あり、船舶の長さは200メートルほどでしょうか。25メートルある車輌を4輌ずつ押し込んでいきます。この作業が同時進行で行われるわけで、違う景色から同じ車輌が運ばれるのは非常に趣があります。


 車輌は同じ船の腹のそれぞれの線路に入れられます。この間の作業は30分。みんな慎重に行っています。それぞれの線路の脇にトイレが設置されてあり、乗客はトイレに行く際、初めて列車から船のトイレに移ることができるわけです。幸い私の乗車した列車には、隣が甲板でしたので、外に出て海の空気を吸う事は出来ました。あと乗船中は全車両及び船内は禁煙になります。
トイレに行こうとしたら硬座の乗客が、デッキから車内までずらっと並んでいて、軟臥は人が少なくていいいやなんて思っていたら、同じトイレを使うみたいで、結局10分ほど待ちました。


 船は大海原へとゆっくりと推進していきます。分厚い雲に覆われた大陸の天気も海上に出ると急に太陽の光が差し込んできます。
 列車が船の中にある状態の中、することのない服務員は始めに、万が一船が暗礁乗り上げなどで遭難したときのための救助服の着方をレクチャーしてくれました。あとはずっと残った私ともう一人の乗客とずっと雑談を行っていました。

 船は穏やかな天候の下、何事もなく海を進み、1時間後には海南島の北入り口、海口港に到着しました。海口に到着した後は、同様の連結作業に入ります。ここでも2台のDL機関車が活躍します。ここの作業も要する時間は30分ほどでした。
 車輌が連結されると、列車はゆっくりと動き始め、窓から首を出すと、海口駅の名前の入った、ホームが見えてきました。

 列車は10時半に海口駅に到着。雨続きの広東とは対照的に、こちらはかんかん照りです。列車から降りる前に服務員から海南島の交通情報について、色々聞きました。服務員と仲良くなって一番得だと思うには情報を聞き出すことです。旅は情報があるのと情報がないのとではその後の展開がずっと変わってきます。さらに親切に答えてくれる服務員には大変感謝したくなります。


 この本土と海南島を結ぶ列車:K407/8次は海南島のひとつの窓口として存在していますが、その従業員の徹底された教育には、他の列車従業員にも見習って欲しいものです。

 この列車のお勧めは、朝に乗船させる作業を行うK407次がお勧めです。日本ではお目にかかれない、列車を船ごと運ぶ―この光景を思い切り堪能してください。



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