[ 中国鉄道倶楽部 ][ 中国鉄路旅行記 ][ みんなの旅行記 ]

乗るなら今だ!:上海ー深セン

06年2月28日〜3月1日乗車 著者:ボーゲン管理人

*文章および画像は著作者にあります。したがて無断使用は厳禁!!


 中国の経済都市で古くから外国への門戸を開放してきた上海と香港に面しここ最近、改革開放で経済成長を遂げている深セン。
 この巨大な都市は線路で結ばれているものの、列車で直接行く方法がなく、K99次やK47次で24時間近く乗車したあと、広州(東)で深セン行きの城際特快に乗り換えるのが普通だった。しかも速い方のK99次の広州東止まりは隔日運転なので、スケジュールが合わないと広州にすら行くことができないと来ている。

 その中で06年の春運(1月15日〜2月22日)に上海ー深センを結ぶ臨時列車が走るとニュースで聞いた。列車番号はL140次(深セン→上海):L139次(上海→深セン)。
 途中ショートカットで、湖南省経由の広州廻りではなく京九線を使い江西省ルートで南下するため時間と距離がそれなりに短くなっている。全距離は1711キロで時間は25時間。
情報を聞く限りだと高等な車輌を使っているらしい。そして実際上海西付近に撮影に行くと臨時列車を走っている姿を捉える事ができる。 列車は25Kの車輌を使っており、所属は広東省にある広深鉄路局。

 実は全く乗るつもりはなかったのだが、28日に急遽上海から深センにいく用事が出来て、K99次だと乗車日が広州東止まりではなく香港になってしまうため、色々悩んだ結果、L140次に乗ることになった。何で飛行機を使わないか?だってそこに深センに行く専用列車があるじゃないか。
 この列車、本来は春運期間のみ運行だったのが、そこそこ乗車率も高く、毎日走っているということもあり、3月いっぱいまで運転していそうだ。無論この情報はネットで入手したものなのでラッキーといえばラッキーだった。この辺の悪運の強さは恐らく自慢できる能力の1つになるだろう。
 早速、上海の軟席切符売り場に切符を買いに行く。泊まったホテルの近くにも大きな切符売り場があるが、春運が終わっても学生の帰還やまだ切符が買えずに仕方なく買えるまで駅前で寝泊りしている奴等が蔓延っており、しかも係員のいる窓口から、長蛇の列を何本も作っており、出来れば2度と利用したくない思わせる場所なので使わなかった。
 まっ、軟臥が第一希望だから専用の切符売り場で買う方法が賢い遣り方と言うのではないか?

 私はサイト上ではいつも「軟臥に乗れ!」と口を酸っぱくしていっている。なぜなら日本と勝手の違う中国だと、サービスの概念が全く違う。

 そもそも中国列車の場合、21世紀に入った今でも、乗客は「神様」ではなく「モノ以下」に見られることが多い。列車従業員から見れば一番偉いのが従業員で乗客はカス以下である。
 信じられないが、それは従業員が安い座席の切符を持っている乗客に対しての言動や行動から「差別している」という意識がはっきりと伝わってくる(大都会発のZ列車や特快ではこのような塵従業員は減りつつある)。 また硬座や硬臥がいつも混んでいるのは安いのが魅力だけでなく、ただ単に人をすし詰めにする構造以外は考えて造られていない。
 無論安い硬臥の中段、上段も横になるだけなら何とかなるが、その上下空間の狭さは特筆物で、身長175cm以上の人間なら奴隷船に乗せられているようなものである。
 だから軟臥とそれ以外では人によっては天国と地獄である。しかしながら軟臥はZ列車を除けば長距離列車だと大体1輌あるのみで2輌以上は珍しいので最近は特快の軟臥などは一番先に売り切れることも珍しくない。 とは言っても軟臥はサービスの悪い中国の列車の中では「一番人間扱いさせてもらえる」ので乗るに越したことはない。
とにかく中国では「乗り物に金を惜しむな!」これに尽きる。

話が脱線した。

 軟臥下段切符は難なく手に入った。料金は525元。1711キロ分の普快料金と比べても5元安かった。時間的にK99次と比べてもさほど時間は変わらず、K99次より軟臥は約70元安く、K99次のように広州東から深センまで別に70元払って城際特快に乗る必要が全く無い。 意?外と安上がりなもんだとおもった。そう、帰りの深セン→上海飛行機チケットを購入するまでは・・・。

 乗車当日、上海の天気は生憎の雨。乗車する頃は止んで、どんよりとした曇りだった。列車は5番ホームに停車している。夜逃げするかのような格好で重いスーツケースを引きずり、階段にぶつけながら列車の停まっているホームに降りる。
 列車は純白の車体に青と赤のラインが入った25K車輌がニーハオしてくれている。乗車する軟臥は8輌目でこの列車では一番顔がマシだろうと思われる女性服務員が待っていた。入り口で切符と換車票を交換し、切符に書かれていた7番ベットのある部屋に向かっていく。
 軟臥の通路には女性で構成されたお掃除隊がまだ残っていて、色々な整備を行なっていた。しかし顔はまだ若いよ。


 軟臥は四方客車製で深センー北京西を走るT108次と同じ造りだった。内部はほぼ木目調で統一されているし、テーブルの下にコンセント用の電源がついている。  この車輌タイプはベットのしたの空間が狭く、私のスーツケースは残念ながら収納できない。

 時間にまだ余裕があったので列車を降りて、先頭車輌に行く。サボを撮影していると、うしろにうっすらと文字が見える。よく見るとN快速:深センー岳陽。
 をいをい!この車輌はN快速の流用ですか?そうですか。後でわかったことだが、本家の岳陽行きN快速は深センで見たとき、車輌は25Gに降格させられていた・・・。




 車両編成は電源車1輌、軟臥2輌、硬臥8輌、硬座6輌、食堂車1輌の合計18輌だった。もう1輌の軟臥は乗務員用の宿営車だった。

 14:21に列車はまた雨の降ってきた上海駅を出た。臨時と言うことで最初からノロノロ。上海西手前で早くも併走する上海→北京の緑皮車普快に後からぶち抜かれる。 こいつあー幾らなんでも遅すぎやしないかい?

 列車の服務員は2人で1輌を担当している。1人で2輌担当しているZ列車と比べて随分気楽な業務なようだ。その分給料も低いのだろうけど。 ただその分だれることなく、若い男の乗務員が各部屋を回って宿帳記入を行っているが、この態度が随分と慇懃で、こっちが驚いたくらい。
 さらに列車発車後、今度は女性服務員が廻って来て、トイレの位置、設備の扱い方を細々と教えてくれる。うわーここまでのサービスZ列車でもまだないよー。南のほうは心の教育が北と比べ随分行き届いているな。と感心しまくり。このレベルを北京鉄路局の服務員にも感染してもらいたいものだ。 ちなみに女性服務員に今日の乗客の混み具合はどお?ときいたら6割で少なすぎと答えていた。軟臥も半分はカラだしなあ。

15:03に松江に到着。乗客の乗降は行なっていなかったが、ホームには降りれた。
停車は3分ほどだったが、上海→寧波行きのT745次城際特快に抜かされた。
15:40に嘉善に停車。この時間帯は従業員の早い夕食時間。みんなゾロゾロと食堂車に向かっていく。
15:56に嘉興に停車。貨物に抜かされる。

17:00に杭州東駅に停車。あたりは暗くなっている。マイク放送で20分遅れていますと案内があった。そりゃだらだら走っていれば、25K車輌だって遅く感じるよ。

 同じ軟臥個室には若い上海出身のにいちゃんのみ(※以下上海君)。彼はアパレルの仕事をやっており、出張で深センに行くそうだ。彼は飛行機が嫌いらしく、飛行機で行くなら20時間かけて鉄道で行ったほうがいいという考えを常日頃から持っているそうだ。 ?2時間くらい話した。私は―日本で働き、こっちには旅行で来ている―と出鱈目なことを言っておいた。

この列車の車輌の感想を聞いてみたら、

上海:悪くは無い、でも前乗った軟臥にはTVが付いていた。この列車にはTVが無い
オレ:どこで乗ったの?
上海:上海→北京
オレ:ヘェエ!何時乗ったん?
上海:3年前
オレ:その車輌、今はもう無いよ。北京ー上海間のZ列車はTV付いていないし
上海:そうか。それにしてもアンタ鉄道のこと詳しいね
オレ:ギクッ!い・いやあ、上海の友達が教えてくれたんだ(汗)・・・。でも出張って面倒くさくない?
上海:面倒だよ。移動が辛いし、かといって飛行機は怖くて乗りたくない。地で行ったほうが安全だよ
オレ:そうか。ところで出張が多いようだけど、旅行なんかは行けているの?
上海:厳しいね。週末の週休2日じゃあ何処にも行けない。春節休みは1週間だったし。逆に気軽に旅行が出来るアンタみたいな外国人がうらやましいよ
オレ:そうか、オレは出張で鉄道に乗れること自体がうらやましいよ
上海:アンタ変わっているね?
オレ:まあね。変わり者だから中国が好きなのさ

とまあこんな具合での会話のやりとりがあったことは覚えている。上海で2ヶ月近く勉強をやっていたから、会話も少しは上達したみたいだ(汗)。

19:16に義烏に到着。相変らずダラダラ走っている。
そういや夕食は食堂車に行こうとしたがどうせボッタクリ価格なので値段を見るたびにムカッ腹が立つので、乗車前にローソンで大量のおにぎりを購入しておき、昼と夜にそれを食べた。


20:00に金華西に到着。乗車時に出くわした若い女の子のお掃除隊はこの駅でみんな降りていった。
 まだ20時過ぎなのに硬臥はもう消灯時間。早いなあ。と部屋に戻ると上海君も部屋を真っ暗にしていて寝ていた。なんで中国人は年寄り並に早く寝るんだ??
 そういやうちらの部屋にはひとつ問題があった。それは軟臥の扉が重く、体重を掛けないとレバーが下がらないと困った状態だった。複数の服務員に何とかしてもらうよう頼んでも「私達が直せないんだからどうしょうも無いじゃない」と捨て台詞を吐いて同僚のいる車両に行ってしまった・・・。

22時にはいつの間にか寝ていた。


翌日7時すぎ、目を覚ますともう江西省に入ったらしく、いかにも山賊が出そうな山あいを通過中。それにしてもなにかが変だ。
寝ぼけ眼で景色を見る。あれっ?いつの間にか反対向きを走っている。

時刻表をチェックすると、客運は扱っていないが、向塘駅という京九線とクロスする所で上海から京九線に入る列車はみんなここで向きを変えている。

7:52 吉安に到着

 この日の江西省も天気は良くない。昨日の上海と同じく、何時雨が降ってもおかしくない厚い雲が列車の上を占領しているようだった。ただし気温は寒くなく、上着が要らないくらいだ。
 朝食はカップラーメン。化学調味料をふんだんに使った代物なんて普段なら全く食べないが、料金と内容が不一致な列車食堂で朝ごはんを食べる気全く無かったのでおにぎりと同様昨日の乗車前に買っておいたものだ。

8:50 カン州に到着 あと8時間で深センに到着。既に朝から放送で「既に1時間40分遅れています」なんてしゃあしゃあと言ってくれるから欝になる。夜中のうちにダイヤ元に戻せなかったんですか?

オレ:悲しいけどコレ、臨時なのよね

13:40 龍川を過?ぎるとお墓地帯を幾つも目にした。日本の霊園やお寺と違い、どこかの山に固まって埋葬されている。そういや宝山蒸気の線路端にも「最近出来ました」と言いたげな墓があった。
江西省は春に突入しており、時折窓越しから見る一面黄色と緑に染まった菜の花畑を目にするたびに中国の厳しい冬を越えたと実感する。

15:30 本来ならこの列車はとうに深センに到着しているのだが、まだ恵州さえ通過していないんだから、その遅さ推し量るべしになる。
女性服務員に聞いても、すみません、終点まであと2時間かかります。「すみません」を使ってくるあたりはまだ好い方か。


車内放送で「みなさんはなぜ列車はおくれるとおもっていますか〜?」とあらかじめ女性の声で録音したテープがながれてきた。

お前らの関係者が運行管理に関し無能という理由以外思いつく方法が無いんですがなにか?

上海君が欝そうに窓の外を見ている
オレ:今日は仕事に行くの?
上海:うーん、とりあえず顔は出さなきゃと思っている
オレ:でも迎えは来るの?
上海:来ない、行き方をさっき電話で聞いた。ただ深センの治安が分からない
オレ:駅前にはスリがいるよ。気を付けな

 列車はマイペースで、恵州・東莞東に停車し、やっとこさ広深鉄路の線路に入る。しかし優先されるのは広深鉄路の城際特快や九廣鉄路の香港行きのみで、普快や遅い列車は哀れ、貨物専用線の上を走るのだった。 とはいえ、途中から本線に入ったらしく、今までのスローッぷりが嘘の様に急に速度が上がっていく。

 ここまで頑張ってもらって非常に言いにくいんだけど、

もう遅いよ、アンタ

 17時過ぎ、2度目の夜を迎える頃、列車は乱立するビル林群を抜けて深セン駅に入る。 2時間オーバーの27時間運転だった。
 降りる際は服務員がスーツケースを持ってくれた。なかなかここまで出来る従業員は多くない。改めて南の豊かさと暖かさを感じとったみたいだ。

 L139次列車は本来走っていない区間を走るのであり難いと言えば有り難いのだが、何せイレギュラーな存在のため後回しにされる。 とはいっても上海→広州(東)より、安くてのんびりとした列車の旅が好きな方なら是非乗ってください。


※追記

 深センで用事が終わり、上海に買える際寄ったとある旅行社で深セン宝安空港発→上海浦東空港着の切符は幾らかを確認した所なんと650元である。 しかも昼間フライトだったので深センのホテルを出てから上海のホテルに着くまで6時間はかからなかったように見える。27時間で525元と6時間で650元なら誰もが飛行機移動を選ぶ。

 現在の中国は長江南方面から広州の沿岸沿いまで、南は南嶺と呼ばれる山脈が横たわっており、移動は空路意外だとひたすら時間がかかる。しかも南に抜け出る線路が少ないのが大きなハンディだ。
 そのため鉄道側では少しでもハンディを減らそうと上海ー株洲間では旅客専用線の建設と電化への工事が急ピッチで行なわれている。また上海南に巨大な駅を建造し、杭州方面行きの列車は全てここから発車させるようだ。
 もし旅客専用線と電化工事が終われば、列車は速度アップを行うことが出来、上海ー深センを結ぶ列車もまだ廃止されていなければ、27時間の所を10時間は短縮できるだろう。 運行時間が短縮されれば、上手くいけばL139/140次列車は夜発午前着の特快列車に変身するかもしれない。あとは飛行機に無?い付加価値を付けてあげればこの列車の将来性は高いと思います。


↑ページの一番上へ     次へ(T15次乗車記)
  

[ 中国鉄道倶楽部 ][ 中国鉄路旅行記 ][ みんなの旅行記 ]

Copyright (C) 2004-2006 borgen. All Rights Reserved.