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北京ー上海、Z5次直達特快乗車記

05年10月28日乗車 著者:ボーゲン管理人

*文章および画像は著作者にあります。したがて無断使用は厳禁!!


北京にやってきたZ列車(イメージ)


【列車紹介】

  Z5次を含むZ列車(直達特快)は2004年の4月の第5次提速時に誕生した国産の列車の中では最も速い列車にあたる。現在19本あるZ列車のうち18本は北京駅及び北京西駅を起点としている。そのうち5本は北京ー上海間を結び、北京ー上海間の輸送力増大に一役担っている。
 時速は160キロで専用の機関車が牽引する。したがって速さは他の特快と比べてもずば抜けているし、何より優先されている列車なので朝の列車が詰る以外は遅れる事は滅多に無い。北京ー上海間の距離は1463キロで所要時間は04年4月まで14時間、04年4月以降は12時間を切っている。

もともと飛行機をコンセプトに誕生した列車なので

@警備も兼ねて途中停車駅なし、
A車輌は軟臥編成が基本でいつも清潔、
B無料食事サービスがある(上海鉄路局管轄のみ)、
C服務員のしっかりしたサービス、
D切符は20日前から全国の大きな駅ならどこでも買える、

と他の特快より充実したサービスを受けられる。

 編成は1両の食堂車と17両の軟臥編成。全車輌軟臥編成の意図は、敷居を高くし、低収入の人間を乗車できなくさせ、警備上の安全を図っている。
 軟臥のRW25Tは長春客車製と四方客車製と2種類あるが、北京ー上海・杭州は長春客車製で四方客車より一足先に製造された。2004年11月から長春製の軟臥と軟座を連結した(当時は食堂車は無い)T135/6次が北京ー上海間をテストを兼ねて運用を開始し、翌05年4月時のダイヤ改正の際に量産化された。

 残念ながら快適性は各車輌にプラグドア採用と各軟臥個室ベットに液晶TVと電源を設置している四方客車製に軍配が上がるが、車輌に使われる内装の材質は長春製の方が優れている。なぜなら四方客車製の軟臥はRW25Kの延長線上に製造されたものだが、長春客車製は開発時のままで造られているためかなりのコストがかかっている(YW25T硬臥以降は内装レベルを四方と共有化)。
 したがってトイレや手洗い場などに使われている材質はものすごくいいし、軟臥の雰囲気を高級ホテル風に醸し出す照明や壁等は高級軟臥のRW19Tよりランクが1つ上だ。この車輌を紹介しただけで、やはり特快と特快に使われる25K型車輌とZ列車とZに使われる25T型との壁は大きかった。それだけにこの列車の偉大さが分かる。

Z5次の洗面場Z5次のトイレ、暖房つきZ5次の軟臥通路

 つまり中国列車の最先端の技術を体験してみようと思うのなら迷わず直達(Z列車)をお勧めする。特快列車との差の大きさにびっくりするはずだ。特に北京ー上海間なら5本のZ列車が走っているため、初心者でも買うことは容易。ただし中国三大国民の休日の際には買いやすい切符として真っ先に売り切れる(休日の前日と当日の20日前に9割は売れる)ので注意すること。

【乗車記】

 Z列車の切符は27日に北京西駅に到着した時点で買っておけばよかったものの、切符は始発駅でしか買えないというクセでなおかつ泊まるホテルから至近距離ということでわざわざ北京駅に買いに行った。10月の月末近くだが、天気予報を見ると最低気温が零下を下回っているので広州で生活している人間にとってかなり寒い場所だ。そのために北京の夜は切符を買うこと以外は外出できる状態ではなく、部屋に籠もっていた。
Z5次列車の料金は軟臥下段499元、上段478元である。

 翌日(28日)夕方18時にホテルをチェックアウト、道路を挟んで目の前に北京駅があるのはとても楽。とはいえ最近パソコンが重く感じはじめる。やはり年をとったからか?

 軟席候車室に行くが、ほとんどの軟臥専用Z列車が北京駅を発車するため、軟席候車室とはいえ普通の候車室と変わらない混みっぷり。しかも軟候車室からの乗客扱いは隣の1番ホームから発車する列車のみなので、他のホームから発車する列車は改札が始まる時は指定された場所に移動しなければいけない面倒臭さを持つ。Z5次も4番ホームからの発車なので2階にある中央改札口まで移動しなければいけなかった。

北京駅軟席候車室Z列車の待っているホームへ

 重厚のある北京駅の駅舎は何年も前から変わっていないが、列車が発着する駅内部は大分様変わりしていて、見た目は空港と変わらない。ホームは底上げされていて、乗降口と同じ高さにある。ホームの屋根を支える柱はホームになく全て線路側に建てられている。ホームへ降りる階段も開放されていて、階段を降り始めるときにはほとんどのホームが上から見渡せる。さすがZ列車発車に伴うホームの改造を施しただけあって近代的な建築物だ。

 18時40分に改札が始まりホームに降りる。列車は既にホームに停車しており、服務員が笑顔で乗客を出迎えてくれる。Z列車は乗車時に切符と換証票を交換しなくて済むし、いちいち身分証を確認する必要も無い。この手軽さから多くの乗客がZ列車を選択する。運行開始当初は物珍しさもあり毎日乗車率は90%を越えていたが、開始1年ほどで同じ時間帯に5本も北京ー上海行きを走らせる無茶さと、料金の高い軟臥のみの編成とあいまって利用客は激減。
 朝に1本廻すとか1時間発車を遅らせてそれぞれ1本ずつ列車を廻すとか色々な手はあるが(20時発や21時発の方が需要があると思うのだが)、残念ながら日の丸親方の中国式国営だと中々小回りが効かない現状だ。北京ー上海間のZ列車をどうにかしなければ他の鉄道改革も成功しないと思う。乗車率激減のおかげで切符は乗車直前でも自力で買える。買えることにはあり難いが。

Z列車牽引機DF11Gホームと車輌の間隔が空いている場所は敷板を使って乗客の神経を使わせないようにする気配りもこの列車では行なわれている

 北京ー上海間のZ列車でもZ13/4次とZ21/2次は特別な列車で高級軟臥が連結されている(ただし19K型なので造りは古い)。そのため本来はZ13次に乗車したかったのだが乗車前日に買いに行ったらZ13次は下段が全部売り切れなのでZ5次にした。Z5次は相当切符が余っているようだ。というよりもZ5次やZ7次は知名度が高くないので内容は他のZ列車と同じなんだけど、ほとんどの人が知らないので、この列車番号を覚えていれば多分乗車前日までならあっさり購入できると思う。

 荷物を抱えて列車に乗り込む。10ヶ月ぶりのZ列車乗車だが、照明や壁の材質等、高級感を演出する方法が上手く感じられる。これは特快の25K車輌と比べると愕然とするくらい造りも質も全て高級志向である。軟臥内には雑誌と新聞が置かれており、まあ有る程度中国語の読める自分も苦にはならなかった。軟臥個室内にある電気のスイッチは誰でも見やすく扱いやすい。光の加減を何段階にも調節できるのには驚いた。
服務員室を覘くと無料配布用の弁当が置かれているが、毎日612名(36人軟臥17両の乗車できる人数)の弁当を用意しているのかは謎だ(多分用意しているんだろうな)。

 今回の同じ部屋の人は下段の中国の方。上段に乗客はいなく、他の部屋も上段客はいなかった。たった10元ちょいを浮かすために上り下りの大変な上段ベットに好き好んでいく乗客はいないか。

Z列車のデッキZ列車の無料弁当

 19:14、列車が発車してしばらくすると乗務員が無料弁当を配りに来る。この弁当は15元するT108次の弁当よりも質感もボリュームも高くZ列車の中でも一番のサービスと言っても過言ではない。現時点で無料食事サービスを行なっている列車はZ5/6次、Z7/8次、Z13/4次、Z37/8次(北京西ー武昌)である。Z列車の優れている他の部分はトイレで、従来なら垂れ流しが当たり前だったが、床下タンクを採用し汚物から沿線環境を保全する動きを見せている。25Tの初期軟座以外はこの床下タンクを採用し始めている(硬座も)のでまた中国鉄道の格が上がるというものだ。
 床下タンクなので駅停車時もトイレは使えるはずだが、Z5次は技術に自信が無いのか、従業員の教育が徹底されていないか、昔からある習慣が続いているのか、残念ながら発車までトイレが使えることは無かった。それでもトイレが使えるようになってから寒いトイレで乗客が風邪を引かないように暖房をきちんと効かせているサービスには驚いた。Z列車以外でトイレに暖房が付いている列車は無かったと思う(高包はない)。

Z列車軟臥入り口Z列車の軟臥内部

 列車は北からの追い風を受けながら一路南下をしている。外はだいぶ寒くなってきており、所々外灯に映される砂塵や枯葉の乱舞は木枯らしを感じさせ、厳しい河北の冬の到来を印象付けるものだった。

 通路には電光掲示板があるので、時刻と時たま列車の速度が掲示される。北京ー天津間は平均時速145キロ以上出しており、最高で時速157キロと言う数字も目にした。
 他に電光掲示板で面白いものを目にしたのは「もし今日あなたの誕生日だたら、服務員一同あなたのために歌を歌います」と言う内容だった。たしかに列車によっては誕生日ケーキを用意してくれる列車もあるようだが、駅の切符購入時点で切符販売員に誕生日のことを言っても「そんなもの知るか!!」で終わってしまう。どのようにしてその鉄路局管轄で誕生日ケーキを根回しさせることが出来るか。この辺の中国の事情を全く知らない我々外国人観光客にとっては常々不利な環境であることは間違いない。

 天津西駅を通過した後は食堂車に行った。すでに配布さえた弁当を食べ終えていたのでお腹一杯で、更に高いZ列車の料理を注文する気は無かった。食堂車はZ13/4次と同じ造りで、作業場がガラス張りのシースルー(作業が見える)で奥のほうにはラウンジがある。一応従業員には他の乗客に迷惑をかけないから撮影の許可を求めたら了解してくれたが、なかなかいい写真が撮れていないのが残念だ。

Z列車のデッキ2Z列車の食堂車

 乗車して3時間が過ぎた頃、眠くなったので床に就き、気付いたら夜中の2時をまわっていた。もちろん機関車は途中停車はしていない。途中停車しないように機関車にはトイレが備え付けられて、機関士も3人交代で運転を行なっているためノンストップが可能と言うわけだ。
 トイレに行き再び床に就いた後は眠りが浅く、南京長江大橋を渡る音だけははっきりと聞こえた。あとは6時過ぎまでずっと寝ていた。大体到着60分前に服務員が起こしに来るが、個室の2人ともそれに気付かなかった。ようやく服を着替えて通路に出たときは蘇州駅を通過していた。あと1時間足らずで上海駅に着く。上海も南方とはいえやはり寒そう。とはいえ着れる服は限られているので我慢するしかないか。

 列車は定刻通りに上海駅に到着。11時間58分の旅だった。まあ夜行列車なら12時間は必要で10時間を切る夜行は乗った気がしない。列車到着時の際、上海駅から橙色のDF11Bが緑皮車の南翔(黄渡)行きを牽引していたが時刻表に載っていない列車のため、乗客を乗せるのか鉄道関係者を乗せるのかは分からない。

 列車を降りたが、上海駅も肌寒く、陽のあたる部分を歩いて寒さをしのいだ。上海駅は1番ホームの高さと乗降口が同じで、あとはホームと乗降口の位置の差があるために下車時には注意が必要。あわてて転げ落ちないように。
 1番ホームはお偉い幹部が来るのか、警官がびっしり。パトカーも数台止まっていた。最近上海行きZ列車に幹部用の車輌を連結しているという情報が入ってきているので、今は週末だから最後に来るZ1次の列車に連結されているかもしれない。面倒なことに巻き込まれたくなかったので撮り鉄もそこそこにして、さっさと上海駅を出た。

Z列車の通路上海駅に到着

 Z列車は何度も言うように中国鉄道に飛行機のコンセプトを持ってきた極めてレベルの高い列車である。この列車に乗れば中国鉄道に対するイメージも良くなると考えるのは間違いないし今後中国鉄道の未来を決める列車でもある。あとは中国鉄道自身がいかにZ列車の運行に対して何らかの手を打ったり、対策を施すことに期待するしかない。利用者激減とあってはせっかくのZ列車も形無しなので。



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